保証にかかる民法改正動向について

保証にかかる民法改正動向について   
            
 平成26年8月26日、民法改正に関する要綱仮案が決定されました。5年前から審議会が始まり、論点整理、中間試案を経て、いよいよ大詰めとなります。
 今回は、保証債務についての議論の内容を一部ご紹介したいと思います。
 会社が事業資金を借り入れるにあたり負った債務の個人保証は、保証人の支払い能力に対して過大な負担となることが多く、事業が破綻すると同時に自己所有の自宅までも失う等、保証人の社会生活に深刻な問題を引き起こすことが従来から問題視されていました。
 安倍首相は、成長戦略にかかるスピーチの中で「個人保証偏重の慣行から脱すべき」と述べ、民法改正の中間試案においても、個人である保証人保護の方策拡充が盛り込まれました。
 この中間試案の段階では、①裁判所が「主たる債務の内容、保証契約の締結に至る経緯やその後の経過、保証期間、保証人の支払い能力」等々を考慮して保証債務の額を減免することができる「減免制度」や、②「保証債務の内容が(保証時における)保証人の財産・収入に照らして過大であったとき」は、過大であった部分の履行の請求ができないとする「比例原則」も検討事項として掲げられていました。
 これらの制度が実現すれば画期的なものとなったのですが、残念ながら、要綱仮案では、これらの方策は取り上げられないこととなりました。
 事業にかかる債務の保証は、原則公正証書によらねばならないとの立て付けになったものの、取締役・執行役・大株主等についてはこの例外とされ、詰まるところ、現状多くの中小企業で行われている経営者保証については、ほぼ従来通りの運用が許されることとなってしまいました。
 とはいえ、中間試案段階で、上記「減免制度」や「比例原則」が文字化されたことの意味は大きいと思います。
 これら制度を真に必要とする者が、制度成立へ声を上げ続けることが大切だと思います。

弁護士 松山 純子