民主主義を殺させてはならない

民主主義を殺させてはならない     
 憲法を無視して生まれてきた集団的自衛権という妖怪が動き出そうとしています。自衛隊の内部文書で米軍とともに戦争をするための集団的自衛権だと明らかになりました。日本をとりまく情勢に対処するのに、妖怪の力を借りなくても個別的自衛権で対応できます。
 憲法違反といわれ、様々な疑問や問題点が明らかになっていくなか、昨年9月19日「議場騒然、聴取不能」のなか強行採決されました。法案の賛否はおいても、まともな議論をせず、答弁が変遷しても結論ありきに終始した国会審議は恥ずかしいことです。
 3・11の東日本大震災、津波、原発事故以後、この国は、被害と真摯に向き合い、復興や解決をしようとしません。「切り捨てる」という姿勢で、これは3.11も安保法案も辺野古も同じです。
 デモに出て行く若者は戦争いやだではなく、民主主義の危機、不安を感じているのです。民主主義は、単なる多数決ではありません。民主主義は相手の意見を尊重し議論を重ねて一致点を見いだすことがその要諦です。代議制は国民の意思を尊重し反映させる制度であり、国民の意思を無視してよいというものではありません。
 スイスは直接民主主義の国で有名ですが、EUへの参加も議会だけでなく国民投票でも否決されて加盟していません。代議制であっても、最終的に決めるのは国民一人ひとりであるという理念を大切にすべきです。
 選挙の時だけ主権者で、後は奴隷のようにご主人様の言うことを聞けという政治は民主主義を殺すものです。ワイマール憲法下、選挙で多数を得たナチスが全権授権法をつくり、まず共産党そして宗教者に至るまで弾圧した歴史があります。政治が民衆の声を聞かず、選挙で選ばれた独裁がファシズムを生んだのです。麻生財務相が言ったように「おとなしく静かにファシズムはやってくる」のです。彼らにとって、その後の熱狂のために、今、民衆に声を上げさせてはいけないのです。
 国会議員が投票マシンに堕落し、その品格や品性のなさを見せつけられている今日、問われているのは私たちの有り様ではないでしょうか。

弁護士 乕田 喜代隆