The法円坂vol.70 マイナンバーを考える

マイナンバーを考える                 

弁護士 乕田喜代隆

1) 二〇一五年にマイナンバー制度が作られたが、マイナンバーカードの取得は進んでいない。ポイントを二万円まで付与しても、50%程度である。河野大臣はポイント付与は邪道だと言いながら、ともかくカードを取得してくれという。
 そして、紙の健康保険証をなくして、マイナンバーカードに切り替えるという話がでてきた。二〇二一月十か、健康という機微な情報がカードの記録されることによる不安も消えない。さらに、「デジタル田園都市国家構想交付金」では、カードの交付率を自治体の交付金に反映させるというのである。
2) マイナンバーとは 国民の一人一人に12桁の番号をつけること、根拠法は「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」である。
 政府は、マイナンバー制度は、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平公正な社会を実現する社会基盤です(総務省ホームページ)という。法一条には、まず行政機関が行政運営の効率化のためにマイナンバーを利用することが明記されている。個人を識別するために全国民に番号をつけて、行政の間では個人情報を共有できる。
 他方、プライバシー保護と安全性を守るために、マイナンバーは社会保障、税、災害の三分野で活用されると限定してきた。
3) 一元的管理は個人の情報すべてが把握されるので、国民が監視されプライバシー侵害の恐れが大きい。そこで、マイナンバーの活用を3分野に限定されてきた。それにもかかわらず、限定をはずし全てに活用しようとしている。デジタル社会の実現に向けた重点計画でも、マイナンバーの活用が中心的手段とされている。マイナンバーカードに個人情報を記録し、アクセスできるようにすることが活用である。デジタル化にあたり民間との連携をいうが、個人情報の民間活用がどのような結果を生むか不安がある。
 マイナンバー制度において、個人情報が引き出されないように分散管理とプライバシー保護をきちんとすることが重要である。政府には透明性が求められるが、政府のやることをみると信頼できない。国民監視のため個人情報保護がないがしろにされる危険がないのか。私たちが、個人情報が一元管理されることの意味を考えることが大事になっている。