The法円坂vol.71 大阪万博はいのち輝く未来を創れるか

大阪万博はいのち輝く未来を創れるか

 弁護士 乕田喜代隆

 万博開催が危うい。自前のパピリオンを作る国が増えないし、撤退する国も出てきた。建築費は最初1250億円から2350億円の約1.9倍になっている。建設工事の動きも遅い。そんな中、パピリオン建設について、時間外労働の上限規制の対象外にするという声が上がった。万博協会も要望していた。災害と思えばよいという発言も飛び出した。

 時間外労働の上限は月45時間、年760時間。労使合意でも年720時間、月100時間、複数月平均80時間を超えてはいけないと定められた。建設業と運輸業は、2024年4月で上限規制を猶予されていた期間がきれる。東京オリンピックでは、長時間労働を強いられて建設会社の社員が過労自殺した。

 万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」である。実現するために①いのちを知る②いのちを育む③いのちを守る等の8つの事業を設定している。「いのち」を謳う万博で、法を無視して長時間労働をせよという。万博協会、大阪府、大阪市、国は労働者のいのちをどう考えているのだろうか。

 夢洲は、ゴミの廃棄処分場、産業廃棄物や建築廃材の処分場である。PCBがありメタンガスも発生する土壌汚染問題がある。また、地震や台風などによる津波や高潮による大きな被害が生じる。アクセスが悪くて災害時の非難や救助が困難である。廃棄物を放り込んできた場所で、地盤沈下は必至である。万博は問題山積である。これらを検討することをせず、突き進むのは止めた方がよい。

 夢洲を舞台に万博とIRカジノはセットで考えられてきた。処分場を閉めて万博会場にし交通も含め整備することは、IRカジノにも必要なのだ。だから突き進むでは万博の理念が泣く。

 愛知万博は、自然環境破壊に対する批判を受け止め、市民と話し合い、環境問題を前面に縮小して開催した。万博も一方的に発信するだけでなく、「いのち輝く未来」のためにどうするか話し合いをすることが大切でないか。

 万博は「いのち輝く未来を」構築することがテーマであり、国際的にも社会的分断や紛争、いのちの危険が問題になる中で、どんな未来を示せるのか。しかし、現状は、開催だけが目的化して、万博の名のもとに「超法規」で平時でできないことをするショックドクトリンになっている。

 万博が、カジノが、現在や未来の社会を豊かな社会にするのか、真剣に考えるべきである。世論調査でも68%の人が万博不要という。一度立ち止まるべきである。