The法円坂vol.71 ノーモア・ミナマタ第2次近畿訴訟大阪地裁判決のこと

ノーモア・ミナマタ第2次近畿訴訟大阪地裁判決のこと

弁護士 中島宏治

1 水俣病とのかかわり

 事務所のホームページの弁護士紹介のところで、弁護士を目指す原点について、以下のように記載しています。

 「学生時代に水俣病の裁判を支援する機会があり、そのとき、患者さんたちから教えられたことが本当にたくさんありました。耐え難い苦痛や、どん底の絶望の中にいたにも関わらず、力強く生きてきた方々だからこそ、真の思いやりや優しさを知っていることに気づかされたのです。以来、弁護士とはそのような方々に寄り添い、一緒に闘いながら自分を成長させることのできる仕事だと考えています。」

2 全面勝訴の大阪地裁判決

 2023(令和5)年9月27日、大阪地方裁判所は、かつて熊本県内や鹿児島県内の不知火海一円に居住し、日常的に不知火海産の魚介類を摂食していたために水俣病に罹患したとして、国、熊本県及びチッソ株式会社に対して損害賠償請求を求めていた集団訴訟について、原告128名全員の請求を認容する判決を言い渡しました。

 僕は、今回は弁護団の一員として、法廷でこの判決を聞きました。2014(平成26)年9月の提訴以来、かなり力を入れてこの事件に取り組んできましたので、こちらの主張が次々と判決で認められたことが嬉しくて、弁護士になって初めて判決を聞きながら涙しました。

3 判決の意義とこれから

 今回の原告は、当初の居住地から大阪府などの西日本や中部地方に移住していた人々で、症状が出たときに地元を離れていたことから、症状に苦しみながら医療機関を受診しても原因不明とされ、水俣病被害者であることさえ知ることができずにいた、あるいは水俣病との診断を受けていても従来の救済枠組みによって救済されてこなかった方々です。

 昭和40年代の四大公害裁判を経て、水俣病認定制度が発足したのですが、認定者はわずか3000人(新潟水俣病を除けば2300人弱)です。その後、集団訴訟により救済の枠が広がっては期間を限定して打ち切るということを続けており、まだ水俣病は解決していないのです。

 今回の判決で、原告128名全員が水俣病と認められたことは、現在の水俣病の救済制度が誤っていたことを正面から認めるもので、その意義は大きいものがあります。

 被告らはいずれも控訴し、舞台は大阪高裁に移りました。2024年3月22日には熊本地裁判決、同年4月18日には新潟地裁判決を控えています。これらの判決でまた大きな報道がされますので、是非とも注目していただきたいと思います。