The法円坂vol.68 ビジネスと人権

ビジネスと人権

弁護士 中島宏治

 2015年9月、国連にて、「我々の世界を変革する:持続可能な開発目標のための2030アジェンダ」(SDGs)が採択されました。SDGsの17の目標は、デザインがシンプルかつカラフルで、大企業を中心に浸透してきました。2030年への社会的課題への全世界の取り組みの目標ですので、中小企業における取り組みがこれから重要になると思います。

 また、SDGsは「人権」という観点からも重要です。国連では2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」というガイドラインを作成し、国別の行動計画を作成するよう要請しています。日本においても、昨年10月16日に、行動計画(NAP:National ction lan)が示されたところです。

 これまでCSR(企業の社会的責任)というキーワードがありましたが、今後は「ビジネスと人権」というキーワードが重要になると思います。NAPにおいて、「SDGsの実現と人権の保護・促進は、相互に補強し合い、表裏一体の関係にあると考える。」との記載があります。

 では、具体的にどのような人権が問題とされているのでしょうか。NAPにおいて記述があるのは、①労働(ディーセント・ワークの促進等)、②子どもの権利の保護・促進、③新しい技術の発展に伴う人権、④消費者の権利・役割、⑤法の下の平等(障害者、女性、性的指向・性自認等)、⑥外国人材の受入れ・共生です。

 このうち、①労働については、働き方改革の推進、ハラスメントの抑制、外国人技能実習生が具体的な課題として挙げられています。③新しい技術の発展に伴う人権については、ヘイトスピーチを含むインターネット上の名誉棄損・プライバシー侵害、AIの利用とプライバシー保護が具体的課題として挙げられています。

 これらの項目は、SDGsにおける「5 ジェンダー平等を実現しよう」「8 働きがいも経済成長も」「10 人や国の不平等をなくそう」などの目標とも関連します。

 今後のビジネス活動において、ぜひ「人権」の観点を重視していただければと思います。